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幼児には本物を

アンパンマンの作者のやなせたかしさんが、昨年94歳で惜しまれて亡くなられました。私は40年前担任をしていた頃、「てのひらを太陽に」と言うやなせさん作詞の歌を発表会での合奏曲に選んだ思い出があります。

アンパンマンの絵本はその後10年くらい経って出版され、子どもたちに人気の絵本となり、私も絵本と最初に出会った時からのファンになりました。

今ではアンパンマンミュージアムもでき、正義の味方アンパンマンを知らない人はいないと思います。そのやなせさんが亡くなられた後、放送されたテレビ番組で、「幼児は不思議と本物がわかるんですね。漫画でも子どもだからと言ってレベルを下げてしまうのはよくないですよ。」と言われたことが心に残りました。

「幼児には本物を」と言うことですが、初代のお茶のおけいこの先生をしていた母も「小さいお子様だからこそ本物の道具を使わないと、初めて見たものを本物と思ってしまうから。」と本物の茶の湯の道具を自分で揃え、茶室内での言動は子どもたちを一人の人間として尊重していました。今もその伝統は引き継がれています。

幼稚園の教育の中でもいろいろな場面で「本物を」を意識しています。ぬいぐるみでない生きたウサギやトリを飼う。本物は温かく、食べたりウンチをしたりする。生きた花を花瓶にさす。本物は枯れてしまう。かまどに薪をくべて、火を燃やし、いもをふかし、もち米をふかし、本物の火を見せる。火は熱い、危ない、煙が出る。今は青いガスの火か火のないIHの調理台になっているので、火を知らないで育ってしまう子が増えています。日本の伝統行事や遊びをする。獅子舞、もちつき、豆まき、大山ゴマ、羽根つき、等々後世に伝えていきたいものがいっぱいあります。

ただ見せるだけでなく、本気で大人が子どもたちに一生懸命つくすこと、それが本物として、子どもの心を揺さぶり感性を育てるのではないかと思うのです。